登場人物紹介







「だから貴様な、一体どうやって軍の出撃情報を手に入れているのだ」
「えと……ライズさんから、聞いたんですけれど」

 戦時非常召集D弐号指定時刻、午前三時、外はまだ暗い。見送りに来たアンと話しながら鎧を着込む。なるほど、サリシュアンなら知っていても不思議ではないか。ただ昨年はどうやって知ったのかについては相変わらず謎のままだが。

「アン、そこの革袋を持ってこい」
「あ、はい」

 アンが振り向き、つま先立ちになって壁にかかる革袋に手を伸ばす。と、その時。

「隊長! もう全員集まってますよ! まだですか!」

 扉がどんどんと叩かれ、その向こうから副長のせっぱ詰まった声が聞こえてきた。慌てるなっつーに。どうせ集合から出撃までは時間があるんだ。軍団長のありがたい訓辞など聞きたくもない。

「焦るな、すぐ行く。外で待ってろ」
「絶対ですよ!」

 剣を取り、アンから受け取った革袋をベルトに吊り下げ、ザックを肩に背負って立ち上がる。俺は隣でその様子をじっと見つめていたアンに言った。

「さて、行くぞ」
「……絶対に、生きて、帰ってきてくれますよね?」
「阿呆、当然だ。それより貴様も出るんだ、鍵を閉められんだろーが。自分の部屋で待ってろ」
「はい!」



 ダナン攻防戦。この戦におけるドルファンとヴァルファの単純な兵力比は、十五対一。その時点で勝負はついていた。ヴァルファがダナンに籠城する作戦を取っていたなら、また話は違っていただろうが、敵指揮官はどういう訳かその選択肢を捨て討って出てきたのだ。数に勝る敵に対し平野を戦場の舞台にして挑むとは、信じがたい愚行である。
 それでも最初の十分までは、騎士団の連携の乱れと錬度の差もあって善戦していたようだが、あまりにも数が違いすぎた。騎士団の一大隊に背後に回り込まれると、圧倒的少数の兵力を誤魔化すことができなくなり、その統率は崩れていった。

 ――というのがこれまでの動きなんだが、俺はそれに参加していなかったりする。小高い丘から戦場を見下ろす。平野では、既に掃討戦が始まっていた。ドルファンの総指揮官は、ヴァルファの連中を一兵たりとも逃がさずこの場で全滅させるつもりなのだろう。ドルファン軍が、数に物を言わせてヴァルファを一箇所に追い立てるように集め、逃げ道を無くそうとしているのがここからだとよくわかる。

「もう出番はなさそうですね」

 隣で同じく戦場を見下ろしていた副長が、弛緩しきったような声を出した。その顔には生傷一つ無く、鎧には泥の雫すら付着していない。出陣してからというもの、前年の戦とは正反対に、一度として戦闘していないのだから当然のことだろう。
 だが、出番がないとは認識が甘すぎる。

「甘いな」
「え。どういうことですか?」
「このエキセントリック間抜け。何のために、俺様と部下共が」

 そこで俺は言葉を止め、周辺で思い思いに休んでいる、総勢約二百人の俺の部下共をざっと腕の動きで示した。彼らの背後には、軍全体の中枢部、指揮官や参謀の控えるテント群が設置されている。

「この、作戦本部前という要所に配置されていると思ってるんだ」
「手柄を立てさせないためでしょう。イリハでの俺達の活躍は」
「たわけ、訂正しろ。『俺様の』活躍だ」
「……。『隊長の』活躍は、軍上層部に危機感を抱かせるに十分なものがありましたからね。傭兵が騎士団よりも活躍してしまったことで、騎士達の存在意義が問われています。少なくとも勝ち戦にある限り、俺達が前線に出されることはもうないのかもしれません。ここは要所とはいっても、戦闘に巻き込まれる可能性のほとんどない場所ですし」
「ふん、確かに上の馬鹿はそういう考えを持っていたかもな」
「……というと、隊長にはまだ何か、考えが?」

 俺は答えず一歩踏み出し、戦場をざっと見渡した。ヴァルファの組織的抵抗が終ろうとしていた。赤色の軍団が一箇所に集められ、それを囲むように、ドルファンの旗が円状に連なっている。包囲網がじりじりと狭められていくのが、肉眼でも確認できた。一気に包囲殲滅するつもりだろう。
 頃合だ。

「そろそろ来るぞ、用意しとけ。一騎当千という評判が本当なら、こういう状況でこそ力を発揮する奴らだ。無論俺様には及ばないだろうが」
「……は? なんのことです?」
「八騎将だ」


 その瞬間。恐怖が戦場を覆った。


 巨漢の男が、ドルファン本陣――つまりここだ――に向かって前進し、行く手を遮る包囲網を食い破らんとしている。刃の部分だけで人の胴体ほどもあろうかという大斧を、木枝のように振り回し、その一撃ごとに、ドルファンの騎士が馬ごと七、八人なぎ払われていく。生と死をかけて双方が激突する戦場にあって、あまりに一方的に、相手の血だけを撒き散らしていく。
 男が大斧を横に振るった。それだけで雑兵の首が胴体から離れ宙を飛んだ。それも七つ同時に。
 まだ殺したり無いのか、間を置かずさらに踏み出し、大斧を縦に振るう。重量五百キロを越えるであろう軍馬と跨る騎士が、その鉄塊の暴力をまともに受け空高く舞い上がった。
 それでも前進と破壊は止まらない。大斧を眼前に構え、竜巻のように振り回す。男の正面百八十度に立つ雑兵達が、旋風の動きが生む衝撃波で吹き飛された。

 俺はその様子を、オプション一号を通して観察していた。伝わってくるのは視覚だけではない。肉がたたきつぶされ分断され、それが地にどちゃり、と激突する音が鼓膜に響く。……ふん、予想通りだ。

「な――」

 副長が絶句している。一騎当千、の意味がわかっていなかったか。
 巨漢の男の周囲にあるのは、人間の姿をとどめていない散乱する肉の塊と、それを源流とし流れ出る血の川。
 なおも歩みは止まらない。あの斧が血を吸った人間の数は、既に二百を越えただろう。にも関わらず、その動きは全く鈍っていない。雑兵はあの男の障害物にすらなっていない。無残にちぎれた死体の河を後に残し、男はさらに、北欧神話における破壊の巨人のように確実に、一定の速度でこちらに迫ってくる。
 遠巻きに取り囲む――既に近寄ろうとする者はおらず、その進路にある兵は怯え我先にと逃げ出している――ドルファンの軟弱騎士たちが恐怖するさまが、オプション一号の視点を通し見て取れる。
 いや、既にこの本陣さえも恐慌に陥っている。後方からは戸惑いと恐怖が入り混じったざわめき声が聞こえてくる。

 最後までその正面に残っていた勇敢な騎士を一刀両断し、男が包囲網を完全に抜け出した。包囲殲滅に騎士団の六大隊が割かれ、残った一大隊も回り込んでダナンへと進軍させられていたため、作戦本部とあの男の間には、既に俺達だけしか残っていない。
 俺は剣を鞘から抜いた。

「隊長、ボランキオですっ! と、止まりません! こっちに来ます!」

 坂を駆け上がって姿を現した金髪の少年が、慌てた語調で報告する。腰に二本の剣の鞘を携えているが……見覚えのある顔だな。確か……三ヶ月ぐらい前に、訓練をつけてやった奴か。

「なんだ、貴様か。なぜ部隊から離れていた」
「じ、自分は一応伝令係ですので」
「ほー、そうだったのか」
「って、そんなこと話してる場合じゃないです! もう、すぐそこにっ」

 その時、影が俺たちを覆った。雲か? いや違う! 俺は空を見上げた。
 太陽に覆いかぶさる、赤黒い大斧。それを大上段に構える――ヴァルファバラハリアン八騎将の一人、不動のボランキオ。

「全員、上だ! 来るぞ!」

 この人外が! どこが不動だ、空を飛ぶな! 反則だ!
 心の中で文句を唱えつつ、俺は剣の柄を顔の前でしっかりと固定し、まぶたを閉じ、地を砕かんばかりに踏みしめ、予想される衝撃に備えた。

ドゴォォォォォン!

 耳をつんざき鼓膜を破らんとする轟音、視力を奪う舞い上がる砂煙、そして吹き飛ばされそうなほどの衝撃波。それらが一度に襲い掛かってきた。歯をくいしばり、何とか堪える。
 だが、チャンスだ。奴も全力の一撃を放った直後で油断しているはず。
 俺はそこにいるだろう、と勘で予測をつけた場所に目を瞑ったまま大きく踏み込み、全身の筋肉から力をひねり出して、最高の袈裟斬りを繰り出した。

「ぬぁっ!?」

 ガギィン、と金属が激突する音。空気が激震を伝える。
 目を開け、状況を確認する。俺の一撃は、ボランキオが頭上に構える大斧に阻まれていた。防がれた!?

「ちいっ! 防ぐなこの馬鹿!」

 くそっ! 俺のパーフェクト美しい一撃を!
 だが、さすがに俺のスーパーな攻撃力を吸収しきることは不可能だったのだろう、ボランキオの膝がぐらついている。バランスを崩したのは確かだ。息を止めたまま剣を引き、心臓めがけて突く。

「ぬぅん!」

 が、その切っ先がボランキオに届く前に、大斧が俺の頭めがけ振り下ろされた。このままでは、例え剣が心臓を刺し貫いたとしても、俺の頭も同時にカチ割られることになる。デカい体をしてやがる癖に、なんて敏捷い奴だ!

「くっ――そおっ!」

 相打ちなど死んでもごめんだ! とっさに剣を離し、横っ跳びする。間一髪で外れた大斧は勢い余って地面に激突し、爆発するような凄まじい音と共に地を割った。長さが人の丈ほどもある亀裂が入る。
 俺は受身を取ってすぐに立ち上がった。その途中に、最初の衝撃波で倒れたらしき傭兵の手から、剣を取り上げる。それを中段に構え、ボランキオと対峙する。ボランキオは地に刺さった大斧を右手で引き抜き、それを持って仁王立ちになった。
 周りをぐるりと見渡す。ボランキオの最初の一撃でだろう、辺りに居た俺の部下のほとんどは地面に倒れ伏していた。わずかに二人、副長と金髪の少年だけは倒れず立ち続けているが、二人ともヒザががくがくと震えている。戦いの役には立ちそうも無い。
 強烈な殺気を放つボランキオに視線を返す。俺が最初に打ち込んだダメージはもう回復してしまったようだ。くそ、チャンスを生かせなかったか? いや。まだだ!

「ほう、お前はネクセラリアを負かしたという東洋人だな。この不動のボランキオの死戦に花を添えるのは、貴様か?」
「死ねぇ!」
「言葉はいらぬか!」

 俺は一足で間合いを詰め力任せに斬りかかった。一気に勝負を決めてやる!



 ギィン!

 十数合の打ち合いの後、俺はバックステップを踏み、ボランキオから離れた。
 ボランキオは――追ってこない。斧を正面に構え、見下すように睨み付けてきながら仁王立ちし続けている。くそ……ボランキオめ、俺が最初に斬りかかった時から、足をまったく動かしていない。上半身の動きだけで、俺の正確さと速さを併せ持つエクセレントな斬撃に対応してやがる。まだ余力があるっていうのか。

「はあ、はあ、はあ」

 乱れた呼吸を整える。それにしてもこのマッチョ親父、なんという馬鹿力だ!
 先ほどまでの攻防を思い出す。剣と大斧が激突するたび、背骨にとてつもない衝撃が走った。大斧を受け流すたびに足跡が陥没し、体ごとぺしゃんこにされてしまうような錯覚を覚えた。パワーでは明らかにあちらが上だ。攻撃をまともに受ければあの馬鹿力に完全に押し切られてしまうだろう。
 いや、それはまだいい。それより遥かに重大な問題が発生している。この量産品の安物の剣は、あの馬鹿でかい上異様に頑丈な大斧と比べ明らかに見劣りしている。あと数合も打ち合えば、こんなボロ剣は根元から折れてしまうことだろう。武器を失くせば、その時は――

「どうした、もう終わりか!」

 ボランキオから勝ち誇るような声が聞こえてくる。ちっ! 賭けになるが、もう奥の手を出すしかない!

「うるせー黙りやがれっ! この俺様の本当の実力、貴様にもネクセラリアと同じく、思い知らせてやる!」
「面白い! ならばこの不動のボランキオ、最高の技を持って応えよう!」

 ボランキオが大斧を頭上で回転させ始める。空気が激しく震動し、砂粒が舞う。止まっていた風が暴れ始めた。従者達を吹っ飛ばしたあの技か。
 覚悟を、決めた。俺はベルトにぶら下げた革袋に手をやり――


 ぶすり


「…な…」

 大斧の回転が止まった。ボランキオの着る真紅の重鎧、その右胸部分から、刃が突き出ている。俺とボランキオの呆然とした視線がそれに集中した。
 一瞬後、ボランキオの膝ががくりと落ちた。巨体が沈む。その背後から姿を現したのは――伝令係、だったかの、金髪の少年。何時の間に回りこんだのか、その手に収まる大小二本の剣、それらは確かにボランキオの背中に深々と突き刺さっていた。

「不意打ちは戦いの基本……でしたよね、隊長」

 そう言って、少年がニヤリと笑う。
 その通りだが……ふん。ガキが格好つけても全く絵にならんな。俺様と違って。

 ぎらり

 殺気を感じ、反射的にボランキオの顔を見る。その目に狂気の光がぎらついていた。
 厳つい右手がぴくりと動き、大斧がブレる。……危険、だ!

「ばか者、止まるな!」
「え?」

「ぐおぉおおぉぉぉぉお!」

 猛獣のような雄たけびと共に、ボランキオの腕が恐ろしい勢いで振り上がった。背後に立つ金髪少年に向かって、その手から伸びる大斧が振り下ろされる。無理な体勢からの、斜め後ろへの攻撃。にも関わらず、それの速度は残像が見えるほどだった。

「う、わあああぁっ!」

 悲鳴と共に、ぐしゃり、となにかがひしゃげる音が聞こえた。
 油断していたせいで少年は大斧を避けられなかったのだろう。血と肉と命が宙に飛び散っただろう。そう推測した。推測でしかなかった。何故なら俺は、それを視認できなかったからだ。

「――殺す!」

 その前に、地を蹴っていからだ。今こそ、不動のボランキオを倒すこれ以上ない好機だった。全身を一本の巨大な刺突剣と模し、ボランキオの心臓に向かって突進する!

 どすん

 ほとんど体当たりのような俺の一撃に、ボランキオは反応すらできなかった。刃が心臓を貫き、柄まで埋まる。少年のものを含め、合計三本の剣がボランキオの巨体に突き刺さった。いくら八騎将といえど、これで生きていられるわけがない。

「ぐ……ぬ」

 だが、信じられない光景がオプションの視界に入った。ボランキオがゆっくりと、だが確実に、大斧を振り上げようとしている。ふん……とんでもない執念だが、最後のあがきだろう。俺は心臓に突き刺した剣を放し、体を横にズラした。重力に従い落ちてくる大斧が、さっきまで俺のいた地点を通過する。これで終わりだ。
 大斧がボランキオの手からずるりと離れ、どすりと、重量感のある音を立てて地に落ちた。ボランキオの口から、赤黒い血と共にかすれた声が漏れる。

「……これで……妻と子の元へ……行け……る……」

 その言葉を最後に、ボランキオの動きが完全に止まった。糸の切れた操り人形のように、どう、と前のめりに倒れる。巨体を受け地面が揺れた。

 はん……手こずらせやがって。


 俺はまわりに敵がいないことを確認すると、副長が手当てをしている金髪少年に近寄り、しゃがみこんでその様子を見た。足が片方、完全にもがれ、その傷口から血が大量に溢れ出している。その他にも額や腕、わき腹などあちこちに裂傷が走っていた。
 と、少年は俺に気付いたのか、視線を俺の顔に向けた。……まだ生きていたか。表情を苦しそうな笑顔という矛盾したものに変え、震える言葉を漏らす。

「やっぱり、隊長みたい……には……いきません……ね……」
「喋らんほうがいいぞ。九十九パーセント助からんが、喋れば残りの一パーセントもなくなる」

 これだけの血を流して、まだ意識を保っているだけでも奇跡的なのだ。だがそれも長くは続かないだろう。出血が止まらない限り生への希望はない。
 副長が必死の形相で傷口を抑えている。革紐を取り出し、切り離された右足の付け根をしばり、なんとか血の流れを止めようとする。
 が、それでも出血は止まらなかった。足の付け根以外にも出血箇所が多すぎるのだ。
 もう無理だ。限界をゆうに過ぎてしまった。

「やはり百五十パーセント駄目だな。貴様は死ぬ。言いたいことがあるなら好きなだけ喋れ」
「たっ、隊長!?」
「なんだ副長。どうせ死ぬんだ、遺言ぐらいは残したかろう」

 俺の言葉が耳に届いたのか、金髪少年は瞳の照準を俺に合わせ、かすれるような声を出した。

「……じぶんは、やくに……たてまし……たか?」

 声が裏返っている。もはや声帯を満足に震わせることすら適わないのだろう。
 役に立ったか、か。最期の時になぜそんなことを聞くのかわからんが、死に行くものに嘘をついても仕方ないな。

「まあ俺様の髪の毛一本分くらいには」
「……はは…………たいちょう……らしい……や……」
「なんだと、どういう意味だ?」

 その答えは返ってこなかった。金色の前髪の影に隠れたグレーのまなこ。それの輝きが急速に失われていく。額から流れる真紅の血が涙のように眼球を濡らした。

「あ……れ……あか……い……くらい……よ……」

 少年の顔から血の気が引いていく。ずたずたに引き裂かれた腕が、最後の力を振り絞るかのようにして、なにもない空中に差し出された。その手が何を求めているのか――もう、知る由もなかった。


 痙攣が止まった。静止した時間の中で、紫色の唇だけが動き、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「……ごめ……ん…………かあ…………さ………………ん」

 それが、少年の最期だった。


「下の戦闘も決着が付いたらしい、戦いは終わりだ。さっさと損害状況を確認しろ」
「……」

 副長は、俺の指示を聞いてもしばらくは動かず、少年の死に顔をかがみこんで見つめていた。ふん。そういえば副長に指名したとき、指揮の経験は無いとか言っていたな。仲間が死んだ経験はあっても、部下を死なせたのは初めてか。

 と、副長が自分の両頬をぱんぱんと叩いた。少年が持つ二本の剣とその鞘を拾い上げ、すっくと立ち上がる。そして剣を鞘に収め脇に抱えた。それが終ると顔をこちらに向け、まっすぐな視線で俺の顔を見すえる。手を額にびしっと当て、敬礼をした。

「畏まりました――隊長。これより戦後処理に入ります」
「うむ」

 言って、きびすを返し、部下達に命令を下していく。
 速いな。そこそこに優秀な指揮官にはなれるかもしれない。

 ――もっとも、その眼から溢れる涙を止められるならば、の話だが。
 
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