丘の上。一人の男が、数千は下らぬ兵達に囲まれていた。
 将軍用の椅子に座り、つまらなさそうに耳をほじっている。
 男の名前はランス。大陸にその名を轟かす鬼畜戦士、魔人殺しの英雄。
 その男が、戦国最強と名高い武田軍を率いていた。

 上杉家に効果的な一撃を加えるべく、敵の背後を突きMAZOの地を急襲する。その作戦を確実なものとするため、まずは信濃の北にて友軍を待つ。それが昨夜、透琳が言った内容だった。
 が、しかし。
「だー! 援軍とやらはまだ来んのか!」
 ランスは不機嫌さを隠そうともせず、そんなことを言った。
 同時にシィルの胸に不安が広がっていく。
 期限の悪いランスは何を言い出すか分からない。
 そして、何かを言い出すと、決まってとばっちりを受けるのがシィルである。
 機嫌を取り戻してもらうため、これまでシィルは何度となくランスをなだめていた。が、たいした効果は出ていないようだ。
「ちっ。このまま突撃してやろうか」
 などと物騒なことを呟く始末である。
 それはまずい。と、軍事に詳しくないシィルでも理解できる。
 シィルは慌ててランスに近寄り言った。
「あ、あの、もうすこしの辛抱ですよ」
「もう少しー?」
「透琳様の言った予定では、あと十分ぐらいです」
 シィルがそう言った瞬間、本陣の兵の囲みの一角が割れた。
 整然と並ぶ武士達の間から、一人の巨漢の男が姿を現す。
 背後に二匹のてばさきを従えて、のっしのっしと歩いている。
「む?」
 怪訝な表情のランス。それを気にした様子もなく、男はランスの傍まで近寄ると、値踏みするかのように全身をじろりと睨んだ。
 そして、ゆっくりと口を開く。
「貴様がランスとかいう異人か!」
 男はとてつもない大声で言った。物理的な圧迫感を伴った、迫力のある声。
「だったらどうした。つーかお前誰だ」
 が、その迫力ある大声を、ランスは完全に受け流した。
 めんどくさそうに返事を返しながら、特に意味も無く胸を張る。
 彰炎はランスの言に、数秒間反応を見せない。
 が、不意に大きく口を開け、大地を揺るがすかのような大声を出した。
「グワッハハハハハ! よかろう! わしの名は馬場彰炎! 見知りおけい、異人よ!」
「馬場? どっかで聞いた名前だな。なんだったか、シィル」
「え」
 本気ですか。とは声に出さない。ランスの言葉にどう突っ込めば期限を損ねずにいられるか、シィルは思考する。
 が、その答えが出る前にランスの後方に控えていた武士の一人が、つつっと進み出た。そしてランスに進言する。
「何を仰るか、ランス殿。このお方こそ武田四将軍が一、馬場彰炎殿でござるぞ」
「ああ、そうだったっけ」
「将軍の名前程度は、どうか覚えていただきたいものです」
「なんだと。おまーにそんなこと言われる筋合いはない」
「そういう訳にはまいりません。……まさか、拙者の名までお忘れになったのではないでしょうな」
 言われて、ランスはつまらなさそうに男を見た。武士鎧を着た、割と大柄でがっしりとした体格の男。顔と雰囲気は平凡。どこにでもいそうな(ランスから見れば)どうでもいい男である。
 途端に興味を失ったランスが、手を振りつつ適当に言った。
「覚えてない。どっかで会ったか」
「……。あの、失礼ながら。それは大陸流の冗談でございましょうか」
「俺は常に本気でしかものを言わん」
 長倉は目を白黒させると、気を取り直した風で姿勢を正した。
「拙者、長倉と申します。五日前より、副隊長としてランス殿の補佐を務めさせていただいておりますぞ」
 まじめくさった顔で、男が言った。
 ランスは思う。そう言われればどこかで見たような。
 いややっぱり見なかったような。
「そうだったか、シィル」
 と、ランスは真顔でシィルに聞いた。
「はあ。そうですけど」
「顔も名前も覚えはないぞ」
「……あの、シィル殿。本気で言ってるんですか、この人」
「本気です。ランスさまは、男の方の名前は滅多に覚えないんです(興味がないから)」
 シィルの言を聞き、長倉の目が点になっていた。人を掌握するのが将軍の任務である、などという常識を、ランスの態度は完璧に破壊していた。当然の反応と言えた。
「す、すいません、長倉さん、馬場将軍」
 その様子を見て、なぜか謝るシィル。
 特に意味はないかもしれないが、ほとんど反射になってしまっているのだ。
「グワッハハハハ!」
 それらのやり取りを目を剥いて観察していた彰炎は、しかし喝采の声を上げた。
「なに、かまわん! 今日わしの戦いぶりを見れば、生涯、この名を忘れるようなことはあるまいからな!」
 彰炎はそう言ってもう一度高く笑った。
「では、さらばだ! 二刻後、戦場にてな!」
 そしてランスの返事を待たず、来た時と同じく地響きを立てながら、去っていった。
「ランス殿。では、出撃いたしましょう」
「ああ」



 戦いの口火が切られてから、一時間が経過していた。
 展開はほとんど一方的なものとなっていた。
 最初は、ランス率いる武士達が上杉の足軽隊を相手に戦いを繰り広げていた。ランスの個人的武勇と、ランスを信玄に見立て士気を上げる武士達のおかげで、武田軍がやや優勢な情勢となっていた。
 が、彰炎率いる騎馬軍団が戦場に現れ、上杉陣の横腹を抉った瞬間、戦の勝敗は決まった。
「ぐおおおおおおお! 突撃じゃああああああ!」
 彰炎自身を先頭とし、数百のてばさき兵がとてつもない速度で突撃した。彼らは地震を思わせる轟音と共に、大声を上げて上杉軍の横腹をえぐった。突然の奇襲に右往左往する上杉の足軽を、武士を、将達を、槍の切っ先とてばさきの足で次々と蹂躙し、更なる混乱に陥れていく。
 その威容は正に戦国最強の冠に相応しく、豪壮そのものだった。


「んー」
 武田騎馬軍団の凄まじい攻勢をランスは最初、驚きの目で見続けていたが、勝敗が付いたとみるや、本陣に引っ込んでしまった。
 思考経路はこうだ。これ以上戦っても意味無し、めんどくさいからあとは静観しよう。
 要するにさぼっていた。
「ふー。シィル、茶」
「はい、ランス様」
「ずずずー。しかし、いいなああれ。反則だ。俺様も欲しいぞ」
「あれとは、てばさきのことですか。騎馬兵は武田家の中でも選りすぐりの兵達。てばさきを乗りこなすには、尋常ではない訓練が必要ですぞ」
 長倉が冷静に進言した。
 JAPANの中でも武田家だけが、そして武田家の精鋭だけが、てばさきを戦の中で駆ることができるのだ。その技術は一朝一夕では身に付かない。というより、騎馬兵のほとんどは幼少時からてばさきに慣れ親しんだものばかりだった。
「俺様は天才だから大丈夫。しかし、んー。暇だ」
 ふああ、とランスがあくびをした。戦場にあるまじき緊張感の無さである。
 が、そこへ一通の伝令が飛び込んできた。
「ランス殿! お逃げください!」
「は? なんだいきなり」
「謙信です、上杉謙信が、背後より!」
「けんしん……? おお、謙信ちゃんかっ!」
 ランスは茶を放り出すとカオスを手にとり、嬉々とした顔で天幕を飛び出た。呆然とする伝令を残し、シィルと長倉が慌てて後に続いた。

 武田本陣の百メートルほど後方に、そのものはいた。四桁を数える武田軍の間を、たった一人の女性が駆け抜けている。
 長く黒い髪に長烏帽子。身長ほどもあろうかという、細く、長い太刀を軽々と振り回している。
 よく見ればその後方には、三桁に上る人数の男達が倒れ、横たわっていた。そこでは、つい先程まで剣の暴風雨が荒れ狂っていたことだろう。
 が、ランスはそんなところまで気を回さない。
 その視線はただ、謙信の端正な顔にだけ向けられていた。
「おおっ! やっぱり美人だ、グッドだ! いやっほーーーーー!」
「え、ランスさま!?」
「なんと! 無茶ですぞーーーっ!」
 シィルと長倉の警告を完全に無視して、ランスは嬉しそうにカオスを掴み、謙信に突撃した。下心を隠そうともしないほど下品に顔をゆがめ、ひたすら疾走する。

 二人の間には、ひとかたまりの足軽の集団があった。
「上杉謙信……推参!」
 謙信は叫ぶと集団に突っ込み、横薙ぎに刀を一閃した。
 少なくとも、足軽達の目にはそのように見えた。
「うわあ! 逃げろっ! がっ!」
「ひっ、ぐあ!」
 悲鳴の最中、ダダダダン、と衝撃音が連続して響く。
 数秒後、足軽達の全てが地面に倒れ、立つのは謙信一人となった。
 いまやランスと謙信の間を阻むものは、何もなかった。
「がはははははー! いっくぞーーー!」
「……信玄!」
 双方とも、足を止める様子は全くない。
 特に謙信の方は、宿敵を目にし足の動きを更に早めていた。
 勢いを維持したまま二人が激突する。
「はああああっ!」
「がはははははーーーー!」
 謙信の気合の声と、ランスの馬鹿笑いが共鳴した。
 刹那。カオスと謙信の太刀が、真正面から打ち合わされた。
 戦場を引き裂くかのような甲高い金属音が、接点から発せられた。
「ぐおお!?」
 同時に、凄まじい衝撃がランスの腕から全身に伝わってくる。
 ランスの持つ剣がカオスでなければ、剣ごと胴体をなます斬りにされていただろう。それほど鋭く、早く、重く、正確な一撃だった。
「ふっ!」
 謙信はすぐに刀を返し、踊るような足取りで半回転すると、第二の太刀を袈裟懸けに繰り出した。
「ぐ!」
 ランスは何とかそれを受け止める。
 そのまま、刀を挟んで力比べの格好となった。驚きつつもランスは強引にカオスを押しこんだ。謙信の刀をへし折る勢いで、足を踏み込む。
「……は!」
 が、謙信は一声発し、ブーツを深く地面にめり込ませた。
 二人の動きが止まった。謙信とランスの力は、ほとんど拮抗していたのだ。
「んなっ!?」
 ランスは驚愕した。剣を合わせた力比べで、女性に、それも美女に遅れをとるなど、ランスの価値観ではほとんど有り得ないことだった。
 謙信の持つ長い太刀とカオスが、ぎりぎりと嫌な音を立てて火花を散らしている。
 鍔ぜり合いはほとんど互角。しかし、謙信の態度にまだ余裕があるようにランスは思えた。
『美人……なのになんじゃこいつー!』
 叫びは声にならない。そんな余裕は全く無かった。一瞬でも気を抜けば、鈍く光る刃が即座にランスの首を刈り取っていただろう。
 ランスは久しぶりに死の危険を身近に感じていた。
「ええいっ! ずおおおりゃあっ!」
 格好を付けている場合ではない、と、ランスは全身全霊を持って足を強く踏み込み、謙信を僅かに押し返した。
「む」
 謙信の眉がぴくりと動く。その隙をつき、ランスは後方に飛びのいて距離を取った。
 謙信はそれを追いかけなかった。ランスに逃げる意思が無いことを見抜いているようだ。
 更に強烈な一撃を加えるためか、刀を下に構え、体をゆっくりと上下に揺らし、呼吸を整えていた。
「まずい。すごいぞ、この嬢ちゃん。心の友じゃ分が悪い」
「うるさい馬鹿剣! ぐ、ぐ。ええーい!」
 ランスは決断する。力比べは互角。しかし、先程に見た謙信の剣舞は、明らかにランスの上を行っていた。長期戦ではカオスが言ったとおり勝ち目が薄いように思えた。
 長期戦が駄目なら、短期戦しかない。必殺の一撃を持って、即座に勝負を決める。
 美女に手は上げないというポリシーには反するが、背に腹は変えられなかった。
「ぜってー死ぬなよっ! おおお!」
 せめて言葉だけで警告しつつ、ランスはカオスを大きく振りかぶった。
 距離があるにも関わらずの奇妙な行動に、謙信は警戒心を強める。
 と、戦場の温度が下がった。比喩ではない。
 実際に戦場に漂う熱気が、いや殺気が、カオスの周囲に吸い込まれているのだ。
「!」
 謙信はランスの周辺に漂う異常な空気を敏感に感じ取り、一歩後ずさった。
「どおおおおおおおおりゃあああああ! 鬼畜アターーーーック!」
 謙信が引くと同時に、ランスは叫んだ。地面を蹴り、謙信の懐に飛び込む。そして渾身の力を込め、カオスを振り下ろした。
 紫と黒のコントラストを禍々しく描くオーラが、振り下ろす刀身を覆っていた。
 残像すら目視できぬほどの突進、そして剣速だった。
「っ!」
 常人なら反応すらできぬ一撃。しかし謙信は、ほんの僅かに体を引くことで稲妻のような一閃を逸らした。切っ先が謙信の眼前をかすめて通過し、カオスは地面に叩きつけられた。
 瞬間、大地が爆散した。

 ランスらを遠巻きにしていた武士達が、その脅威を直近で目撃していた。英雄同士の決闘を固唾を呑んで見守っていた数十対の目が、驚愕に見開かれた。
 カオスを覆う紫色のオーラは、着地の瞬間に爆発的に膨れ上がるとランスとその周辺を覆い、一挙に弾けた。
 まず光。そして、竜の咆哮を彷彿とさせるような、凄まじい破裂音。
 破裂音と同時に、視認可能な衝撃波が荒々しく戦場を引き裂く。カオスから発せられた莫大なエネルギーが、幾億条もの複雑に絡み合う紫色の光線へと変貌し、槍衾となって一帯の空間をえぐったのだ。
 形あるものの全てを壊す暴威に満ちた空間が、その一帯に形成されていた。ランスの周辺数メートルの地面は、いまや数十センチの規模で大地から抉り取られ、土の破片が灰色の煙となって辺りを覆っていた。

 それらの超絶的な現象が、普通と呼べる規模の土煙に落ち着くまで、数秒間を要した。
 いまだ余波は収まっていない。ランスのマントは無風にも関わらずゆらゆらとはためいていた。ランス自身も、放った一撃の余波で体の節々に傷を負っていた。
「ぜはー、ぜはー……や、やりすぎたか?」
 ランスは打ちつけたカオスを構えて立ち、先ほどまで謙信がいた場所を睨み付けた。爆心地のそこは、クレーターのように大きく陥没しており、ひび割れた地面からはもうもうと煙が上がっていた。
 しまった勢いあまって塵にしたか、すごい美人だったのに……などと、疲労と怪我の割には余裕の思考を繰り広げるランス。
 しかし真実はその逆だった。
「相棒、上ぢゃ!」
「ん?」
 戦士の本能に基き、ランスはカオスを頭上に掲げる。
「はッ!」
 視覚の前に聴覚が効力を発揮した。気合の美声が天頂から轟くと共に、鋭く重い金属音がした。
「どおわっ!?」
 直後、凄まじい重みが圧し掛かる。耐え切れずランスは倒れた。
 その腹の上に、ふわりと白い塊が飛び乗ってくる。
 ランスはそこで初めて認識した。
 謙信は、ランスの一撃を上空に逃れ、かわしていたこと。
 そして今、反撃の一太刀を繰り出してきたことを。
「なっ! うそだー!」
 謙信も、しかし無傷ではなかった。スカート状の鎧の節々が切れ、隙間から血に染まった肌が露出していた。特徴的な長烏帽子はランスの一撃で吹っ飛んだらしく、謙信の黒く長い髪の全てが晴天の下に晒されていた。
 傷だらけの鎧。覗く肌には決して軽症ではない裂傷を負っている。それでも謙信はいまだ戦意に目をたぎらせていた。身はぼろぼろになれど、その飽くなき闘争心は、逆にいや増していた。
「ふっ!」
「げっタンマ! 待った! 待てーーーーーい!」
 ランスの無茶な要請に返事をせず、謙信は右手に小刀のきらめきを見せた。
 先ほどまでその手に握っていた太刀は、忽然と姿を消していた。代わりに数十メートル離れた場所で、一本の太刀が刃の中ほどまでが地面に埋まっていた。
 謙信は、鋭い視線でランスを睨み、小刀を振り上げた。二人の英傑の距離が、数十センチの距離にまで縮まる。
「……」
「ぎゃーーーーっ! おかーちゃーーん!」
「……!」
 そのとき、謙信の動きが、ぴたりと止まった。
「たすけてーー……ん?」
「…………!」
 謙信の瞳が激しく揺れた。
 ぼん、と何かがはじける音がした。
 ランスの耳には、その音は謙信の額のあたりから聞こえてきた音のように感じられた。
「っっ…………!」
 顔を耳たぶまで真っ赤に染めたところで、謙信はばばばっと神速の勢いで飛びのいた。
 そして下がる。下がる。ずりずり下がる。
 とんでもない勢いでランスから遠ざかっていく。
「なんだーっ?」
 命拾いしたランスが、目を丸くして立ち上がる。
 見ると謙信は、握りこぶしを口元に当て、再び動きを止めていた。
 呼吸をしているかどうかすら怪しい。
 時が止まったかのように反応を見せない。
「謙信様ーーーーーーーーー!!」
 止まった時は、外部からの叫び声で打ち破られた。
 早うまに跨った直江愛が、武田本陣に駆け込んできたのだ。
 いつもは冷静で表情を崩さぬ愛にしては、珍しく必死な形相だった。
「おおっ、でこ系美人!」
「じゃまっ!」
 わけのわからない反応を見せるランスを無視して、愛は謙信に駆け寄る。
「謙信っ!」
「……」
「ぼーっとしてない! 乗って!」
「…………あ……」
 謙信の様子は明らかにおかしい。愛は一瞬、怪訝そうに眉を歪めた。
 が、今は悩んでいる暇はない。そう思い、自らの手で強引に謙信をうまに乗せた。
 そして鞭を振るい、動きを見せないランスと武田軍から、凄まじい勢いで遠ざかっていった。



 鬼畜アタックの反動で傷ついたランスを、シィルが癒していた。
「ちっ、逃がしたか……いてて。シィーーーール!」
「は、はい。いたいのいたいのとんでけー、とんでけー」
 その治療の途中、二人のそばに影が差した。シィルが見上げると、二頭の大型のてばさきがのっしのっしと近寄ってきていた。
「きゃっ!」
「どうした、ってうお! でか!」
 現れたのは武田四将軍の一人、馬場彰炎。先程まで前線で暴れまわっていたせいか、その顔には汗と返り血が伝っている。手に持つ大槍の穂先は血で真っ赤に染まっており、この豪傑が先ほどまで幾多の上杉兵を叩き潰していたことを証明していた。
「ほう」
 彰炎は騎馬上からランスを見下ろすとにんまりと笑い、豪快に口を開いた。
「なんと。生きとるか! しかもあの軍神を退けるとは! この馬場彰炎、久方ぶりにおもしろいものを見たわい!」
「うるさい。あと、面白がる暇があったら、とっとと助けにこんか」
 ランスの乱暴な言葉すらも、彰炎は好ましく思ったらしい。
 彰炎は更に大きく口を開き、怒声のような大声で笑った。
「グワッハハハハ! 気に入ったぞ、異人! やるのう!」
 そして言葉を証明するかのように、ばんばんと自らの鎧を叩いた。
「うるさい、筋肉じじいに気に入られても嬉しくない! つーか声が傷に響く! あっちに行ってろ!」
「グワッハハハハハハハ!」
「うるせえええええええ!」
 漫才のようなやり取りが続く。
 険悪なのか仲がいいのか、さっぱりわからない。
「(はあああああ)」
 二人の間に挟まれたシィルは、呆れながらヒーリングを唱え続けた。


 
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